ちょびっと小説『アナザーワールドプレジデント』Day:11

ちょびっと小説『アナザーワールドプレジデント』Day:11

アナザーワールドプレジデント

14日間の隔離生活


Day:11

黒電話が鳴っている。母親が受話器をとったらしい。あれは一体どういう構造になっているのだろうか。あらゆる電話が呼び出しが電子音となり作られた音を流すが、黒電話からは本物のベルの音がする。

電話の相手は誰だろうか。ひょっとしたら石田みくにかもしれない。あのままPCを開かずにいるから昨日の約束がどうなっていたのかも未だわからない。実際に外で会って話を聞いてみるのもよかったかもな、と今になって思う。そういえば御影石はどうしてるのだろうか。もう数日連絡がないままだ。

ここでようやく気付いた。昨夜からスマホの電源が切れたままだったのだ。ゲームをやりこんでそのまま充電をせずにいたのだ。ひょっとしたら妻からの連絡もあったかもしれない、そうだ。妻に聞いてみればいいのだ。…何て?私の名前は何ですか?と聞くのか?私には怖くてそれができなかった。大阪にいる妻と子供、それは本当に私の家族なのか?そこに行くために帰ってきたはずなんだ、それを頼りに隔離生活をしてきたのだ。でもそれが作られた記憶であったら?堂々巡りは続く。今日は朝から雨が降っていて部屋の中まで暗い。私はこの部屋からいつまでも出れないような気がしている。

「電話がきてるよ、お友達だって。石…さん?ってひと。知ってるの?」母親がドアの向こうから声をかけてきた。この母親も私の本当の母親ではないということなのか。私は返事をしてマスクをするとリビングに行き、受話器を取った。

「よかったです、すでに外出してしまったのかと思ったのですが。」女の声ではないことに私は驚いた。石田みくにじゃないのか?

「私です、御影石です。」御影石!彼からの連絡はスマホにくるものとばかり思い込んでいたので意表を突かれた。

「LINEにかけていたんですが、電源を切ってますね。しばらく連絡できずにいてすみません。今ようやく少しだけ時間が取れたので電話しています。」

「御影石さん、いったいどういうことなのか説明してください。一昨日、石田と名乗る女性から連絡があって話を聞きました。大統領計画って何ですか?私が異世界から来てるってどういうことですか?なんで私は自分の名前も思い出せないんですか?!」
彼が何かをしたせいではきっとない。それでも自分の感情を抑えられずにそのままぶつけてしまった。

「今はすべてを話している時間がないんです。この先、事態は大きく変わるかもしれない。その前におそらく石田から連絡が入るでしょう。彼女はなんとしてもあなたを外に連れ出すつもりだ。」

「大統領計画を阻止するとかのためなんでしょう?一体何なんですそれは。だいたい私なんかが大統領とかできるわけないじゃないですか。」

「信じられてはいなかったんです、そもそもは。しかしあなたの乗ってきた飛行機がこの国の上空に現れた時、その計画はスタートせざるを得なかった。なぜならそれは“キボク“の通りだったから。」
「キボク?何です、それは。」

「今は説明する時間がない、大事なことはあなたは外に出てはいけない、ということなんです。いいですか、あの飛行機のほかの搭乗者は全員脱落しました。」

「外に出た、ということなんですね?」

「そうです、外に出ました。そして外に出たものはそのまま・・・消えてしまいました。」

「あなたたちの世界、そこから来た人間はとても不安定なんです。この世界にとっては異物ですから慣れることなく外界と触れ合えば消えてしまう。この14日間はコロナを拡散させないためと、あなた達にとっては自分の意志で体を留めるための期間なんです。」

「わけがわからない、私は誰なんです?どこから来たんです?」

「もう行かなくちゃいけない。信じてください。私は味方です。また必ず連絡を入れます。」そういうと電話は切れた。かけなおそうにも番号がわからない。

ならばとスマホの電源を入れようとすると、再び黒電話が鳴りだした。まだまだ知らなきゃいけないことがたくさんある、私は誰か、どこから来たのか、果たして御影石を信じていいのか。今一度覚悟を決めて受話器を取りあげる。

「もしもし?まだ聞かなきゃいけないことがたくさんあるんです!」

「あら、私がかけてくるとわかっていたんですね?」受話器の向こうに石田みくにがいた。

・・・to be continued

イラスト:田中ノリヲ 文:田中トシ

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