ちょびっと小説『アナザーワールドプレジデント』Day:6

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アナザーワールドプレジデント

14日間の隔離生活


Day:6

「いったいどういうことなんです?うちの両親に何かあるんですか?」

両親は二日に一度ほど食料品やら何やらの買い物に行く。そのタイミングを見計らって私のLINEに御影石から連絡が入った。昨夜のうちにメールでIDは連絡してあった。

「まだはっきりとしたことはわからないんです。私たちとしても戸惑っています。確証はないのですがご両親は既に、なんと言えばよいのでしょう。つまり目的を異にする人間とコンタクトをとっている可能性があるのです。」

「ちょっと待ってください、その目的がわからない以上は私にとって誰が味方かはわからない。あなたこそが私の敵である可能性だってあるでしょう。」

「おっしゃることはわかります。だからこそ花田さんをあなたに紹介したわけです。それだけではまだ信用してもらえないのですね。」

「マサさんの兄だろうと、いったい何をしようとしているのか、私にどんな関係があるのかもわからずに信用できるはずがないですよ。」顔は見えないがしばしスマホの向こうで逡巡するような間が流れた。

「わかりました、ではこうお考え下さい。あの飛行機に搭乗された全員は今、レースをしていると。」

「レース?」

「はい、14日間の隔離レース。最後まで家から出ずにすごせた人間を我々は求めているのです。それがなぜなのかまでは今は明かせません。」

「えっと、何そのレース?」どうにも馬鹿らしくなってきた。どこの暇人がそんなレースを主催するんだ。

「当然、レースにはございます!」と突然力強く言い放つ御影石。

「?」

「それなりの報酬がっ・・・!」

「…っ!?」

ざわ・・・ざわざわ・・・などとやっている場合ではない。つまりは“ある”ということなのかアレが。そういうことならばわかりやすい。しかしそこに関しては明確にしておかなければならない。逃がすな…魚を…っ!!

「・・・なるほど。突然ですが少しだけ飲み込めた気がします。このレースにはなにかしらの賞金、そう呼ばれるようなものがある、と考えていいんですね?」

私の胸が波打つ理由は興奮なのか、それとも不安か。

「そうとってもらって問題ありません。」

「なるほど。額を聞こうとは思いません、御影石さん。私はこう見えて紳士的な男だ。ただあなた方としては私が14日間の隔離を達成することを望んでいる、ならば私のモチベーションはとても大事なことのはず。だからその、やっぱりちょっとだけ賞金の額を教え・・・」

「え?すいません、聞き取れません。ネットがまた・・・」ワンパターンか御影石。

「ともかく私のモチベーションのためにもそのレースがあるという証拠、もしくは関連のあるものを示して下さい。それで、やっぱりちょっとだけ賞金の額を聞い・・・」

「証拠が欲しいという意向はわかりました。花田と相談して後程対応を検討します。」返答が早すぎる、新技を繰り出してきたな御影石。

「ですが、この情報を出している時点でこれはすでに私の権限を越えているものであるとご理解ください。私も体を張る覚悟です。」

電話を終えてしばらく考えを巡らせているうちに、窓の外はもう暗くなり始めている。14日間の隔離競争、つまりこれは何かしらのゲームに参加させられているのだろうか。テレビの企画?そう考えるほうが腑に落ちる。コロナで3密が避けられるようになり、テレビ収録もままならず、演者がリモートで出演する番組も多いという、もしやこれは素人参加型の大型特番なのかもしれない。来るのだろうか、ヨネスケが。突撃されるのか!?晩御飯…っ!!などと言ってる間に母親が晩御飯を運んできてくれた。私は本当に何を大事にすべきなのだろうか。

深夜となり、寝る直前にPCを開くと御影石からメールが届いていた。おそらく証拠となるものを送ってきたのだろう。奇妙なことに文章は空のままだ。ただ一つだけデータが添付されている。

“大統領計画.docx”

これは新しい劇団の名前だろうか。

・・・to be continued

文:田中トシ

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