ちょびっと小説『アナザーワールドプレジデント』Day:3

ちょびっと小説『アナザーワールドプレジデント』Day:3

アナザーワールドプレジデント

14日間の隔離生活


Day:3

「初めまして。御影石です。偽名ではありますがしばらくこのまま話を進めさせてください。」

PCの画面に映る男がそう私に語り掛けてくる。ZOOMを使うのは初めてなのだろうか。アングルが下から過ぎておかしな感じだ。おそらくスマホであろうデバイスを横にしたり縦にしたりしてなんとか調整をしようとする姿が滑稽に映る。これは私より下の人間だ、と少し気持ちに余裕が出た。私はZOOM飲み会はすでに3回やっている上級者なのだ。背景を変えてまるで別の空間にいるように見せることすらできる。

「初めまして、しかしなぜその名前なんです?というよりはなぜ知っているんです?」
私は当然の疑問をその男性、御影石と名乗る男にぶつけてみた。御影石と名乗る男は答える。

「それはまだ明かせません。でもこの名前を出せばあなたが反応することはわかっていたのです。それくらいにはあなたの情報は知っているとお考え下さい。」
その男性、御影石と名乗る男は落ち着いている。画面が暗いのでよく歳がわからないが、一体この男性、御影石と名乗る男は何者なのだろうか。ただの石マニアの可能性だって捨てきれない。墓石業者の可能性はなお高い。ともかく呼び名がめんどくさいのでこいつは御影石と呼ぶ。

「今出せる情報は3つ、まず1つめ。あなたの隔離生活は政府により監視されています。そして2つめ、その理由はあなたの今後を左右するものです。3つめは・・・あ~・・・そう!私は怪しい人間ではないということです。」

三つめの後付け感への苛立ちを抑えながら、この奇人の言うことを私は考えた。わかったのはやべーやつだということだ。よくよく見たら御影石の背景にはアイドルらしき女性のポスターが壁に貼られている。背景の変え方を教えてやりたい。

「警戒なさるお気持ちはわかります。しかし日本についた時から何かおかしい、と感じられていたのではないですか?」

私は今が一番おかしいと感じている、と言いかけてやめておいた。

「どうか信じてください、今日こうしてこの場を設けたのはあなたの信頼を得るためなのです。今20時を過ぎたところ、間もなくあなたに紹介したいと私が言っていた方が入ってきます。その方に会えばあなたに信用してもらえるはずです。」

新手の宗教勧誘の手口なのだろうか。コロナが蔓延し、社会の在り方が問われるほどの時節にずいぶんと手の込んだことをする。いや、こんな時代だからこそ人は繋がりたいと思うのかもしれない。そこにつけ込んでいるとしたら相当に悪質だ。

「御影石さん、私にはあなたを信用する理由がない。日本に帰ってからの違和感は確かにあった。ジャッキー御影石の名前に私が反応したのも事実です。でもそこで唐突に政府がなんて言われてもとてもじゃないけどついていけない。だいたい・・・」
「え?すいません、ネットが途切れ途切れで聞こえなくて・・・もう一度お願いします。」
ZOOMを使っているとままあるものだ。固まった静止画が半目だったりしようものならそれを見て他の者が笑う、それがZOOM。

「だからね、今こうして日本のみならず世界がコロナウィルスというものに社会の存在を問われるような事態なんです。」気を取り直して私は御影石に道理を説いた。
「わかります。」
「そんな時期に宗教の勧誘みたいなことをこうやって平気で・・・」
「え?すいません、聞き取れません。ネットがどうしても・・・」

あやしい。本当にZOOM初心者なのかわからなくなってきた。”ネットが悪くて途切れるの術”を知っているとするなら私は意識を改める必要がある。油断のならぬ人物かもしれない。

そのタイミングでPCの画面上に変化が訪れた。私の映像、御影石の映像、四角い枠が2つ並んでいたものが上2つ、下1つの構成へと変わる。そこで新たに映し出された人物に私は目を見張る。

かの地でよく知る人物が見慣れないスーツ姿でそこに座っていた。

・・・to be continued

文:田中トシ

アナザーワールドプレジデントカテゴリの最新記事